日インド経済連携協定(EAP)における原産品判定基準で使用する記号

日インド経済連携協定(EAP)における原産品判定基準で使用する記号2011 年 8 月に日インド経済連携協定(EPA)が発効されたことで、日本から輸出する産品の多くの関税が協定発効後 5〜10 年間で撤廃され、両国の市場アクセスの改善が図られました。

 

またインドの人口は、近い将来に中国を追い抜き、世界一になることが予想され、また近年GDPも著しい速さで拡大しており、その市場規模は今後も拡大し続けると思われます。

 

そのような環境の中、日インド経済連携協定(EPA)を上手く活用し、関税を削減することは、日本からの輸出する産品の価格競争力を高め、他社との競争で有利に働くことが期待されます。

 

企業にとってEPAは、重要な経営戦略の1つなのです!

 

 

1.日インド経済連携協定(EPA)を利用する為の4つの条件

まずはインドと締結している日インド経済連携協定(EPA)を利用する為には、どのような条件がそろえば、関税が削減できるのか見ていきましょう!

 

日インド経済連携協定(EPA)を利用し、関税を削減するには以下の@~Cの条件の全てを満たさなければなりません。

 

@輸出する産品(HSコード)がEPA税率を設定されていること
A原産地基準を満たすこと
B積送基準を満たすこと
C原産地基準と積送基準を満たすことを税関に証明すること

 

まずは、@輸出する産品(HSコード)がEPA税率を設定されていることが必要です。
そのそも輸出する産品(HSコード)に現在関税が掛かっていなかったら(関税がFREE)、日インド経済連携協定(EPA)を利用する意味がありません。

 

また、産品(HSコード)によって、日インド経済連携協定(EPA)を利用することができないものもありますので、まずは輸出する産品(HSコード)が日インド経済連携協定(EPA)で定められているEPA税率を適用できるか確認が必要です。

 

Bの積送基準を満たすことは、日本からインドに直送されることが必要です。

 

Cの証明書類は特定原産地証明書やB/L、WayBill等で税関に証明することで関税が削減されます。

 

ここからは、Aの日インド経済連携協定(EPA)における原産地基準について解説していきます。

 

それでは早速見ていきましょう!

 

2.日インド経済連携協定(EPA)における原産品判定基準で使用する記号

日インド経済連携協定(EPA)における原産地基準については、基本的に他のEPAと同じです。

 

ただし、日インド経済連携協定(EPA)の最大の特徴として「一般ルール」というものがあります。この「一般ルール」というのが他のEPAとは違いますので、気を付けて下さい。

 

まずは日インド経済連携協定(EPA)における原産地基準の全体像について下記の表を見て確認しましょう!

 

日インド経済連携協定(EAP)における原産品判定基準で使用する記号

 

2-1.完全生産品とは何か?

完全生産品とは締約国において「完全に得られ、または生産される産品」と定義されます。

 

具体的には、農林水産品、鉱物資源といった一次産品のほか、廃棄物やくずなども含まれます。

 

日本の領域において完全に得られ、または生産される産品で、具体的には日本で生まれ、飼育された牛や、その牛から得られる牛乳などです。

 

また日本で採取される果物や野菜、魚なども日本の完全生産品です。
このような産品は、日本の原産品とすることができます。

 

一番イメージしやすいですね!

 

項 目  (例 示)

a. 生きている動物であって、日本において生まれ、かつ、成育されたもの(家畜、領海で採捕した魚等)
b. 日本において狩猟、わなかけ、漁ろう、採集又は捕獲により得られる動物 (捕獲された野生生物)
c. 日本において生きている動物から得られる産品 (卵、牛乳、羊毛等)
d. 日本において収穫され、採取され、又は採集される植物及び植物性生産品 (果物、野菜、切花等)
e. 日本において抽出され、又は得られる鉱物その他の天然の物質 (原油、石炭、岩塩等)
f. 日本の船舶により、両締約国の領海外の海から得られる水産物その他の産品 (公海、排他的経済水域で捕獲した魚等)
g. 日本の工船上において(f)に規定する産品から生産される産品 (工船上で製造した魚の干物等)
h. 日本の領海外の海底又はその下から得られる産品 (大陸棚から採掘した原油等)
i. 日本において収集される産品であって、日本において本来の目的を果たすことができず、回復又は修理が不可能であり、かつ、処分又は部品若しくは原材料の回収のみに適するもの (走行が不可能な廃自動車等)
j. 日本における製造若しくは加工作業又は消費から生ずるくず及び廃品であって、処分又は原材料の回 収のみに適するもの (木くず、金属の削りくず等)
k. 本来の目的を果たすことができず、かつ、回復又は修理が不可能な産品から、日本において回収される部品又は原材料 (走行が不可能な廃自動車から回収したタイヤであって、タイヤとしての使用が可能なもの等)
l. 日本において(a)から(k)までに規定する産品のみから得られ、又は生産される産品 ((a)に該当する牛を屠殺して得られた牛肉等)

 

2-2.原産材料のみから生産される産品とは何か?

これは文字通り、「日本の原産材料のみ」から生産される産品をいいます。

 

しかし一般的には「日本の原産材料のみから生産される産品」であることを証明するのは、非常に大変なため(証明資料がたくさん必要)、作業効率を考えると、次でご紹介する「関税分類変更基準」や「付加価値基準」を使用して、原産性を証明する方が簡単です。

 

下記図で説明すると、「原産品a」、「原産品b」、「原産品c」のそれぞれの原産地規則調べ、その原産地規則を満たしていることを証明する根拠書類を、それぞれ作成しなければならないため、作業工数がどうしても増えてしまいます。

 

また、日本以外の非原産材料を使用している場合は、この基準は使用できません。

 

日インド経済連携協定(EAP)における原産品判定基準で使用する記号

 

日本の「原産材料のみから生産される産品」であることを証明するのは、証明資料がたくさん必要なため、作業効率を考えると、次でご紹介する「関税分類変更基準」や「付加価値基準」を使用して、原産性を証明する方が簡単な場合が多いです!

 

2-3. 実質的変更基準を満たす産品とは何か?

日インド経済連携協定(EAP)における原産品判定基準で使用する記号
日インド経済連携協定(EPA)では、実質的変更基準には大きく2つあり、(1)一般ルールと(2)品目別規則があります。

 

「一般ルール」があることが、日インド経済連携協定(EPA)における原産地基準における最大の特徴です!

 

輸出する産品のHSコードに品目別規則が定められていれば、品目別規則を使用し、品目別規則が定められていなければ「一般ルール」を使用することになります。

 

 

2-3-1.日インド経済連携協定(EPA)における一般ルールとは何か?

一般ルールは、上記の表にあるように、「HSコード6桁変更」と「付加価値基準(35%以上)」の両方を満たしていることが求められます!

 

一般ルールとは、関税分類変更基準(6桁変更)及び付加価値基準(35%)の両方を満たすこと!

 

2-3-2.品目別規則を満たす産品とは何か?

一方、産品のHSコードに「品目別規則」が記載されていれば、品目別規則を使うことになります。

 

日インドEPAの品目別規則は、産品の関税分類(HSコード)ごとに要件が定められており、以下の3つの基準に分類されます。

 

品目別規則
(1)関税分類変更基準

(2)付加価値基準
(3)加工工程基準

これら基準の間には優先関係はなく、いずれかを一つを満たしてればよいというものであり、@〜Bの基準は同格です。

 

原産地基準が「一般ルール」となっている産品は、一般ルールを満たせば原産品として認められます。

一般ルールではなく、(1)関税分類変更基準、(2)付加価値基準、(3)加工工程基準などと定められている場合は、それぞれの基準を満たせば原産品と認められます。

 

@関税分類変更基準(CTC)についての解説

関税分類変更基準とは、輸出産品と輸出産品の生産のために使用された非原産材料の間で、HSコードが変更されている場合、そこに実質的な変更があったとみなし、輸出産品を原産品であると認める基準です。

 

例えば大豆(HSコード:1201)を中国から日本に輸入し、その大豆を日本で味噌(HSコード:2103)に加工したとします。

 

中国産の大豆は、日本で加工することにより味噌に変化(HSコードが変更)されているので、大豆は日本で実質的な変更があったとみなします。

 

大豆は中国産のものであっても、関税分類変更基準を満たし、味噌は日本の原産品であることが認められるというものです。

 

これを、関税分類変更基準(HSコード変更基準)と呼びます。

 


更に関税分類変更基準は、何桁レベルのHSコードの変更が必要なのか、各産品毎に定められています。

 

CC (Change in Chapter)・・・HSコード2桁変更(類の変更)
CTH (Change in Tariff Heading)・・・HSコード4桁変更(項の変更)
CTHS (Change in Tariff Sub Heading)・・・HSコード6桁変更(号の変更)

 

例えば、産品の原産地規則が「CTH」だった場合、HSコード4桁変更が必要になります。
下記の図で説明すると、産品のHSコード4桁が「8302」なので、使用される非原産材料は「8302」以外のHSコードである必要があります。

 

日インド経済連携協定(EAP)における原産品判定基準で使用する記号

産品の「構成部品・材料」が日本原産品であれば、関税分類変更基準を満たしていなくても当然、当該「構成部品・材料」は日本原産品になりますが、原産品と証明する根拠資料が必要になります。

実務的に効率が良い方法として、一旦全ての「構成部品・材料」を「非原産品」として扱い、関税分類変更基準を満たせば「原産品」と扱った方が効率がよいです!

関連記事

HSコードとは
関税分類変更基準(CTC)での必要書類

 

A付加価値基準(QVC)についての解説

付加価値基準(QVC)とは、日本で付加された価値が、ある一定の割合を満たしていることです。

 

日本での付加価値割合は、「一般ルール」や「品目別規則」で定められた割合以上あれば、日本で実質的な変更があったとみなし当該産品は日本の原産品と認められます。

 

HSコードの原産地規則をよく確認し、付加価値基準割合を満たしているかどうか確認しましょう!

 

付加価値とは、日本の原産材料や労務費、経費、利益、間接費等々の合計です。

 

付加価値割合の計算式

日インド経済連携協定(EAP)における原産品判定基準で使用する記号

 

付加価値割合の計算例

日インド経済連携協定(EAP)における原産品判定基準で使用する記号

一番効率の良い方法として、一旦便宜的に、全ての部品・材料を「非原産品」として扱い、算出した付加価値が閾値を超えていれば、日本の原産品として扱うことができます。

閾値を超えなければ、「原産品」と証明しやすい部品・材料から、根拠資料を作成または入手(サプライヤー証明書など)します。
まじめに全ての「原産品」を証明する必要はありません。閾値を超えた時点でOKです!

関連記事

付加価値基準(VA)での根拠資料の作り方
付加価値基準の計算方法徹底解説!(控除方式・積上げ方式・その他の方式)

 

B加工工程基準についての解説

加工工程基準とは、非原産材料に特定の加工又は製造が行われる要求される基準です。

 

日インドEPAでは、農産品については、多くの品目の規則として、産品の製造に使用される全ての材料がその製造が行われる締約国で完全に得られたものであることが要件とされています。

 

また繊維製品についても、多くの品目の規則として、産品は指定される材料から指定された工程を経て製造されることが要件とされています。

農産品及び繊維製品の品目別規則の多くは、関税分類変更基準ではなく、加工工程基準により規定されています。

 

 

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