日EU経済連携協定(EPA)で使用する原産品判定基準で使用する記号
産品が日EU経済連携協定(EPA)で定められた原産性を満たしているかの、HSコード毎に「品目別規則」というがあります。
例えば、「関税分類変更基準」や「付加価値基準」などが代表的です。
これらの基準を満たせば、当該産品は日EU経済連携協定(EPA)における原産性を満たしていると認められます。
協定では、「関税分類変更基準」や「付加価値基準」は英語を短くした「CTH」や「RVC」などと記載されており、一目では理解できないかと思われます。
このページでは日EU経済連携協定(EPA)の原産地規則で使用される省略記号を解説いたします!
完全生産品(WO) ※原産地に関する申告文に記載する記号は「A」
完全生産品とは1つの締約国において「完全に得られ、または生産される産品」と定義されます。
具体的には、農林水産品、鉱物資源といった一次産品のほか、廃棄物やくずなども含まれます。
日本の領域において完全に得られ、または生産される産品で、具体的には日本で生まれ、飼育された牛や、その牛から得られる牛乳などです。
また日本で採取される果物や野菜、魚なども日本の完全生産品です。
このような産品は、日本の原産品とすることができます。
一番イメージしやすいですね。
原産材料のみから生産される産品(PE) ※原産地に関する申告文に記載する記号は「B」
これは文字通り、「日本の原産材料のみ」から生産される産品をいいます。
しかし一般的には「日本の原産材料のみから生産される産品」であることを証明するのは、非常に大変なため(証明資料がたくさん必要)、作業効率を考えると、次でご紹介する「関税分類変更基準」や「付加価値基準」を使用して、原産性を証明する方が簡単です。
下記図で説明すると、「原産品a」、「原産品b」、「原産品c」のそれぞれの原産地規則調べ、その原産地規則を満たしていることを証明する根拠書類を、それぞれ作成しなければならないため、作業工数がどうしても増えてしまいます。
また、日本以外の非原産材料を使用している場合は、この基準は使用できません。
関税分類変更基準(CC、CTH、CTHS)※原産地に関する申告文に記載する記号は「C1」
関税分類変更基準(CTC)とは、輸出産品と輸出産品の生産のために使用された非原産材料の間で、HSコードが変更されている場合、そこに実質的な変更があったとみなし、輸出産品を原産品であると認める基準です。
例えば大豆(1201)を中国から日本に輸入し、その大豆を日本で味噌(2103)に加工したとします。
HSコードが変更されているので、変更した日本で実質的な変更があったとみなし、大豆は中国産のものであっても、味噌は日本の原産品であることが認められるというものです。
これを、関税分類変更基準(HSコード変更基準)と呼びます。
(1201→2103に日本で加工することにより変化)
また、産品の満たすべき原産地規則が「CC」、「CTH」または「CTHS」などの記号が表示されていることがありますが、この記号だけでは、意味がわからないと思われます。
具体的に味噌のHSコードを例に、CC、CTH、CTHSがどのような意味であるか解説していきます!
CC (Change in Chapter)・・・HSコード2桁変更(類の変更)
CTH (Change in Tariff Heading)・・・HSコード4桁変更(項の変更)
CTHS (Change in Tariff Sub Heading)・・・HSコード6桁変更(号の変更)
味噌のHSコードは、「2013.90」です。
CC(2桁変更)とは、味噌に使用している非原産材料が20類以外の類から変更が必要という意味です。
CTH(4桁変更)とは、味噌に使用している非原産材料が2013項以外の項から変更が必要という意味です。
CTHS(6桁変更)とは、味噌に使用している非原産材料が2013.90号以外の号から変更が必要という意味です。
例えば、味噌の品目別原産地規則が「CC」であった場合、味噌に使用されている非原産材料は、HSコード2桁の変更、すなわち20類以外からの変更が必要となります!
具体的に、上記の図で詳しく見ていきましょう!
第三国から輸入された味噌の原材料である大豆(12類)、米(10類)、麹菌(30類)、塩(25類)、水(22類)は、日本で加工することにより味噌(20類)に変化しました。
類(2桁)の変更が発生したので、味噌は第三国の産品を使用していたとしても「CC」を満たすことになります!
第三国から輸入した非原産材料は、日本で加工することにより、20類以外→20類へ変化しました。
たとえ大豆等の非原産材料のものを使用していたとしても、HSコードが変化したので別のものになったとみなし、味噌は関税分類変更基準を満たす日本の原産品として認められるのです!
HSコードとは
RCEP協定における関税分類変更基準(CTC)の根拠資料の作り方
付加価値基準(VA))※原産地に関する申告文に記載する記号は「C2」
付加価値基準とは、日本で付加された価値が、ある一定の割合を満たしていることです。
日EU経済連協定(EPA)では、付加価値基準の計算方式は、日本が多くの国々と締結している従来のEPAで採用している@控除方式(RVC)と、A非原産材料の使用割合に基づく方式(MaxNOM)を併記しています!
産品の原産地規則がMaxNOM50%(EXW)又はRVC55%(FOB)であると仮定してみていきましょう!
非原産材料割合が50%以下であるか、または付加価値割合が55%以上という意味です!
上記の産品はMaxNOM(EXW)50% ≦ 55%なのでMaxNOM55%を満たします!
(非原産材料が55%以下なのでMaxNOM55%を満たす。)
上記の産品はRVC(FOB)46% ≦ 55%なのでRVC55を満たしません!
(付加価値割合が、RVC55なので、55%以上の付加価値が必要になります!)
輸出国内での運送費分についてFOBの方が高くなることから、一律5%の閾値の差が設けられています。
EXWとは聞きなれない方もおられるかもしれませんが、工場出し価格のことです。
RVC: Regional Value Content:域内原産割合
MaxNOM: Maximum value of non‐originating materials:非原産材料使用割合
閾値を超えなければ、「原産品」と証明しやすい部品・材料から、根拠資料を作成または入手(サプライヤー証明書など)します。
まじめに全ての「原産品」を証明する必要はありません。閾値を超えた時点でOKです!
・付加価値基準(VA)での根拠資料の作り方
・付加価値基準の計算方法徹底解説!(控除方式・積上げ方式・その他の方式)
・日EU経済連携協定(EPA)における付加価値基準のトレーシングとは何か?
加工工程基準(CR) ※原産地に関する申告文に記載する記号は「C3」
CR・・・加工工程基準(化学反応に掛かる規則です。)
化学反応による生産品である産品は、当該化学反応が締約国において行われる場合には、原産品とする規則です。
加工工程基準の対象品目的はあまり多くなく、また対象品目はいずれも関税分類変更基準や付加価値基準との選択が可能となっているため、一般的にはこの規定を使用することは多くありません。
加工工程基準とは、例えばA国からプロピレンを輸入し、日本にて化学反応(特定の加工工程)させグリセリンを製造した場合、グリセリンは加工工程基準を満たし、実質的な変更があったとみなし日本の原産品とする規定です。
4. 累積(AUC) ※原産地に関する申告文に記載する記号は「D」
原産品の確認を行う時に、関税分類変更基準や付加価値基準を満たさない場合でも、あきらめるのではなく、救済規定である「累積」という考え方があります。
日EU経済連携協定(EPA)の場合は、「@モノの累積」と「A生産行為の累積」ができます。
4.1 モノの累積とは?
モノの累積とは相手締結国で作ったモノは、自国で作ったモノとみなす考え方です!
付加価値基準で使用するロールアップとは?
モノの累積の代表的な例として、付加価値基準を利用する際の「締約国間ロールアップ」があります!
ロールアップとは、相手締結国の原産品については、原産品全ての価格を、日本の原産材料としてカウントしてよいことを言います。
下記の図で説明すると、相手締結国の原産品Aには締結相手国以外の非原産材料も含まれていますが、締結相手国の原産品であるAの価格50ドルすべてを、日本の原産材料費としてカウントしてもよいという規定です。(締結間ロールアップ)
モノの累積 関税分類変更基準でも使えます!
締結国であるA国で、関税分類変更基準を満たしA国の原産品になったモノは、日本の産品で規定されている関税分類変更基準を満たすことができない場合でも、A国の原産品は日本の原産品としてみなされます!(モノの累積)
4.2 生産行為の累積とは?
前述した「モノの累積」の場合は、「モノ全体」で原産材料として扱うか否かが判断されるため、部分的なの累積は認められないのに対し、相手締結国のでの生産行為で得られた部分を累積できるので、より原産原産品の資格を獲得しやすくなります!
下記の図でご説明すると、相手締結国であるA国の「非原産品」は、@モノの累積の場合は、非原産品の為、全ての価格を非原産品として扱わなければなりませんが、A生産行為の累積の場合は、A国の「原産材料A」やA国の「付加価値C」は、累積により日本の非原産品として扱わなくてよいということになります。
これをトレーシングとも言います。
日EU経済連携協定(EPA)における付加価値基準のトレーシングとは何か?
5. 許容限度(DMI) ※原産地に関する申告文に記載する記号は「E」
関税分類変更基準を利用し原産性を証明する場合、HSコードが変化せずに基準を満たさないケースに使用できる救済規定です。
僅少の非原産材料やデミニミスルールとも言われます。
関税分類変更基準を満たさない非原産材料があったとしても、その使用がわずかな場合、日本の原産品として認める救済規定です。
産品に占める割合が以下に当てはまる場合、その使用がわずかとして日本の原産品として認められます。
許容限度(デミニミスルール)は、関税分類変更基準でしか使用できません。付加価値基準では使用できませんのでご注意ください!
実際に許容限度を使用される場合は、他にも細かな規定がありますので必ず協定を確認の上、使用するようにしてください。