CPTPP 原産地証明書における原産地規則 徹底解説

CPTPPで使用される記号

CPTPP 原産地規則 徹底解説
米国は抜けてしまいましたが、日本を含む11か国が加盟するCPTPP(CPTPP)が、2018年12月30日に発行しました。

 

これらの国々と貿易を行う際、TPPの原産地規則で決められた原産性を満たせば、関税がゼロになったり、現在より低い税率になったりと、コスト面で大変大きなメリットを享受することができます。

 

その原産性を満たしているか証明するのが原産地証明書です。

 

日本は多くの国々と経済連携協定(EPA)を結んでおり、そのほとんどの協定で日本商工会議所が特定原産地証明書を発給する「第三者証明制度」を採用していますが、CPTPPの場合、この「第三者証明制度」採用されておらず、CPTPPでは輸出者又は輸入者自らが、原産地証明書を作成する「輸出者自己証明制度」及び「輸入者自己証明制度」が採用されています。

 

輸出者又は輸入者自らが原産品である旨の申告書を作成する為、CPTPPに関する原産地規則の理解が不可欠になります!

 

産品の原産性を確認し、必要な書類を作成すれば、CPTPP加盟国で輸入時に支払っている輸入関税をゼロにできる可能性があります。

 

取引先や御社にとって、大きなコスト削減につながる可能性があります。

 

せっかく用意された制度ですので、利用できるのであればぜひ利用したいものです。

 

ただし、貨物の原産性を確認し、必要な書類を作成するには専門知識が必要になります。

 

それでは、「CPTPP」とはどのような内容になっているのか徹底解説していきます!

 

 

1. CPTPPの加盟国(12か国)

CPTPP 原産地規則 徹底解説アメリカは残念ながら離脱してしまいましたが、日本を含む以下の12か国で締結されています。

 

日本を除く10か国では、ほぼ100%近い関税が撤廃されます!
日本においても重要5品目(コメなど)を除く、95%の関税が撤廃されます!

 

日本の輸出にとって非常に有利な協定になっております。

 

CPTPP加盟国
1)日本

2)オーストラリア
3)ニュージーランド
4)カナダ
5)メキシコ
6)チリ
7)ペルー
8)マレーシア
9)シンガポール
10)ベトナム
11)ブルネイ
12)英国 ※2024年12月15日発行

 

1. CPTPPと他の経済連携協定(EPA)との関係

CPTPPの締結国とは、個別で複数の経済連携協定(EPA)を締結しています。

 

例えば、オーストラリアとは@RCEP協定、A日豪EPA、BCPTPPの3つのEPAを日本と結んでいます。

 

では複数のEPAを締結している場合は、いったいどのEPAを使わなければならないのでしょうか?

 

正解は、どの協定を使用しても構いません!

 

御社にとって一番有利な協定を使用することをお勧めします。

 

同じ産品であっても、各協定によって、削減される税率が異なったり、原産地規則が異なったりしますので、各協定をよく比較し、御社で最も有利な協定をご使用ください!

 

CPTPP 原産地規則 徹底解説

 

 

2. CPTPPでの特定原産地証明書の種類/発給機関/HSバージョン

1)「CPTPP」で使用される原産地証明書
CPTPPでは日本商工会議所で第一種特定原産地証明書を発給する第三者制度は利用できません!
自己証明制度が採用されています。

 

・輸出者自己証明制度
・輸入者自己証明制度

 

2)特定原産地証明書の発給機関
輸出者又は輸入者が原産地証明書を作成する。

 

3)「CPTPP」で使用するHSバーション
・HS2012を使用

 

3. CPTPPにおける「原産地基準」について

まずは、CPTPPでの原産地基準はどのような内容になっているのか解説していきます。

 

特定原産地証明書を取得するには御社の産品が、この原産地基準を満たしていなければなりません!

 

CPTPPの原産地基準は、@完全生産品、A原産材料から生産される産品、B実質的変更基準を満たす産品の大きく3つの基準があります。

 

そして、Bの実質的変更基準は、産品の関税分類(HSコード)ごとに、3つの品目別規則が定められており、 (1) 関税分類変更基準、(2) 付加価値基準、(3) 加工工程基準の3つの基準があります!

 

産品の関税分類(HSコード)ごとに原産地規則(品目別規則 PSR)が定められているので、産品のHSコードに対応した原産地規則をよく確認しましょう!

 

CPTPPにおける原産地基準

@ 完全生産品(WO)
A 原産材料から生産される産品(PE)
B 実質的変更基準を満たす産品(PSR)
 ※品目別規則
  (1) 関税分類変更基準(CTC)
  (2) 付加価値基準(VA)
  (3) 加工工程基準(SP)

 

産品毎に定められた品目別規則(PSR)は、税関のHPに掲載の「原産地規則ポータル」で簡単に調べることができます。

 

関連記事をリンクしておきます。

 

CPTPPの特徴は、自己申告制度が採用されていることです。

日本商工会議所の第三者制度では、第三者である日本商工会議所が原産品判定を行ってくれますが、CPTPPではこの第三者制度を利用することはできません。
自らが原産地証明書を作成しなければならないので、CPTPPの原産地規則に対する理解が不可欠となります!

 

3.1 完全生産品(WO)とは?

完全生産品とは締約国において「完全に得られ、または生産される産品」と定義されます。

 

具体的には、農林水産品、鉱物資源といった一次産品のほか、廃棄物やくずなども含まれます。

 

日本の領域において完全に得られ、または生産される産品で、具体的には日本で生まれ、飼育された牛や、その牛から得られる牛乳などです。

 

また日本で採取される果物や野菜、魚なども日本の完全生産品です。
このような産品は、日本の原産品とすることができます。

 

一番イメージしやすいですね!

 

項 目  (例 示)

a. 生きている動物であって、日本において生まれ、かつ、成育されたもの(家畜、領海で採捕した魚等)
b. 日本において狩猟、わなかけ、漁ろう、採集又は捕獲により得られる動物 (捕獲された野生生物)
c. 日本において生きている動物から得られる産品 (卵、牛乳、羊毛等)
d. 日本において収穫され、採取され、又は採集される植物及び植物性生産品 (果物、野菜、切花等)
e. 日本において抽出され、又は得られる鉱物その他の天然の物質 (原油、石炭、岩塩等)
f. 日本の船舶により、両締約国の領海外の海から得られる水産物その他の産品 (公海、排他的経済水域で捕獲した魚等)
g. 日本の工船上において(f)に規定する産品から生産される産品 (工船上で製造した魚の干物等)
h. 日本の領海外の海底又はその下から得られる産品 (大陸棚から採掘した原油等)
i. 日本において収集される産品であって、日本において本来の目的を果たすことができず、回復又は修理が不可能であり、かつ、処分又は部品若しくは原材料の回収のみに適するもの (走行が不可能な廃自動車等)
j. 日本における製造若しくは加工作業又は消費から生ずるくず及び廃品であって、処分又は原材料の回 収のみに適するもの (木くず、金属の削りくず等)
k. 本来の目的を果たすことができず、かつ、回復又は修理が不可能な産品から、日本において回収される部品又は原材料 (走行が不可能な廃自動車から回収したタイヤであって、タイヤとしての使用が可能なもの等)
l. 日本において(a)から(k)までに規定する産品のみから得られ、又は生産される産品 ((a)に該当する牛を屠殺して得られた牛肉等)

 

3.2 原産材料のみから生産される産品(PE)とは?

これは文字通り、「日本の原産材料のみ」から生産される産品をいいます。

 

しかし一般的には「日本の原産材料のみから生産される産品」であることを証明するのは、非常に大変なため(証明資料がたくさん必要)、作業効率を考えると、次でご紹介する「関税分類変更基準」や「付加価値基準」を使用して、原産性を証明する方が簡単です。

 

下記図で説明すると、「原産品a」、「原産品b」、「原産品c」のそれぞれの原産地規則調べ、その原産地規則を満たしていることを証明する根拠書類を、それぞれ作成しなければならないため、作業工数がどうしても増えてしまいます。

 

また、日本以外の非原産材料を使用している場合は、この基準は使用できません。

 

CPTPP 原産地規則 徹底解説

日本の「原産材料のみから生産される産品」であることを証明するのは、証明資料がたくさん必要なため、作業効率を考えると、次でご紹介する「関税分類変更基準」や「付加価値基準」を使用して、原産性を証明する方が簡単な場合が多いです!

3.3 実質的変更基準を満たす産品(PSR)とは?

実質的変更基準とは、産品の関税分類(HSコード)毎に要件が定められており、以下の3つの基準に分類されます。

実質的変更基準を満たす産品

(1)関税分類変更基準(WO)
(2)付加価値基準(VA)
(3)加工工程基準(SP)

実質的変更基準を、かみ砕いて説明すると、産品の生産に使用する「非原産材料」が、日本において加工や産品に生産に使用されることにより、実質的に他のモノに変化したと認められる場合は、当該非原産材料は日本の原産材料としてみなすというルールです。

 

また、(1)〜(3)に優先関係はなく、いずれかを一つを満たしてればよいというものであり、(1)〜(3)の基準は同格です

産品によって、定められている品目別規則が異なりますのでご注意下さい。

それでは、(1)関税分類変更基準、(2)付加価値基準、(3)加工工程基準をそれぞれ細かく見ていきましょう!

 

3.3.1 関税分類変更基準(CTC)についての解説

関税分類変更基準(CTC)とは、輸出産品と輸出産品の生産のために使用された非原産材料の間で、HSコードが変更されている場合、そこに実質的な変更があったとみなし、輸出産品を原産品であると認める基準です。

 

例えば大豆(HSコード:1201)を中国から日本に輸入し、その大豆を日本で味噌(HSコード:2103)に加工したとします。

 

中国産の大豆は、日本で加工することにより味噌に変化(HSコードが変更)されているので、大豆は日本で実質的な変更があったとみなします。

 

大豆は中国産のものであっても、関税分類変更基準を満たし、味噌は日本の原産品であることが認められるというものです。

 

これを、関税分類変更基準(HSコード変更基準)と呼びます。

 


更に関税分類変更基準は、何桁レベルのHSコードの変更が必要なのか、各産品毎に定められています。

 

CC (Change in Chapter)・・・HSコード2桁変更(類の変更)
CTH (Change in Tariff Heading)・・・HSコード4桁変更(項の変更)
CTHS (Change in Tariff Sub Heading)・・・HSコード6桁変更(号の変更)

 

例えば、産品の原産地規則が「CTH」だった場合、HSコード4桁変更が必要になります。
下記の図で説明すると、産品のHSコード4桁が「8302」なので、使用される非原産材料は「8302」以外のHSコードである必要があります。

 

CPTPP 原産地規則 徹底解説

 

産品の「構成部品・材料」が日本原産品であれば、関税分類変更基準を満たしていなくても当然、当該「構成部品・材料」は日本原産品になりますが、原産品と証明する根拠資料が必要になります。

実務的に効率が良い方法として、一旦全ての「構成部品・材料」を「非原産品」として扱い、関税分類変更基準を満たせば「原産品」と扱った方が効率がよいです!

関連記事

HSコードとは
関税分類変更基準(CTC)での必要書類

 

3.3.2 付加価値基準(VA)についての解説

付加価値基準(VA)とは、日本で付加された価値が、ある一定の割合を満たしていることです。
(付加価値とは、日本の原産材料や労務費、経費、利益、間接費等々の合計です。)

 

CPTPPでの付加価値割合の計算方法は4種類あります。

 

一般的には「控除方式」を使用します!

 

CPTPPの特徴として、自動車関連の品目などは、「純費用方式」など特別な計算式が採用されています。
では計算式を見ていきましょう!

 

CPTPPでの付加価値基準(VA)の4つの計算方式

1)控除方式
2)積上げ方式
3)重点価格方式
4)純費用方式

 

1) 控除方式について

一番よく使用される計算式です!

 

控除方式の計算式

CPTPP 原産地規則 徹底解説

 

控除方式の計算例

CPTPP 原産地規則 徹底解説

 

2)積上げ方式について

控除方式との違いは 原産材料の価格や経費等、日本で付加される価値を特定し積み上げてRVCを算出する点です。

 

積上げ方式の計算式

CPTPP 原産地規則 徹底解説

 

積上げ方式の計算例

CPTPP 原産地規則 徹底解説

 

3)重点価格方式について

一部の鉱工業品に適用(新たにCPTPPで採用)されています。
控除方式との違いは非原産材料の価格を特定の主要な材料のみとする点です。

 

重点価格方式の計算式

CPTPP 原産地規則 徹底解説

 

重点価格方式の計算例

CPTPP 原産地規則 徹底解説

4)純費用方式について

自動車関連の品目のみに適用(新たにCPTPPで採用)されています。
控除方式との違いは産品の価格(FOB)ではなく、産品の生産に係る純費用を用いる点です。

 

純費用方式の計算式

CPTPP 原産地規則 徹底解説

 

純費用方式の計算例

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一番効率の良い方法としては、控除方式を利用し一旦便宜的に、全ての部品・材料を「非原産品」として扱い、算出した付加価値が閾値を超えていれば、日本の原産品として扱うことができます。

閾値を超えなければ、「原産品」と証明しやすい部品・材料から、根拠資料を作成または入手(サプライヤー証明書など)します。
まじめに全ての「原産品」を証明する必要はありません。閾値を超えた時点でOKです!

 

関連記事

付加価値基準(VA)での根拠資料の作り方
付加価値基準の計算方法徹底解説!(控除方式・積上げ方式・その他の方式)

 

3.3.3 加工工程基準についての解説

加工工程基準(SP)とは、非原産材料に特定の加工工程が施されることが要求される基準です。

 

化学反応、精製、異性体分離の各工程、若しくは生物工学的工程を経ることで実質的な変更があったものとみなし、原産性が与えられる基準です。

 

例えばA国からプロピレンを輸入し、日本にて化学反応(特定の加工工程)させグリセリンを製造した場合、グリセリンは加工工程基準を満たし、実質的な変更があったとみなし日本の原産品として認められます。
CPTPP 原産地規則 徹底解説

加工工程基準の対象品目的はあまり多くなく、また対象品目はいずれも関税分類変更基準や付加価値基準との選択が可能となっているため、一般的にはこの規定を使用することは多くありません。

 

4. 実質的変更の例外@ 累積(AUC)とは?

原産品の確認を行う時に、関税分類変更基準や付加価値基準を満たさない場合でも、あきらめるのではなく、救済規定である「累積」という考え方があります。

 

複数のCPTPP域内国における付加価値や工程の足し上げを可能にする完全累積制度が採用されています!

 

従い、CPTPPは「@モノの累積」「A生産行為の累積」ができます!

 

4.1 モノの累積とは?

モノの累積とは相手締結国で作ったモノは、自国で作ったモノとみなす考え方です!

 

付加価値基準で使用するロールアップとは?

モノの累積の代表的な例として、付加価値基準を利用する際の「締約国間ロールアップ」があります!

 

ロールアップとは、相手締結国の原産品については原産品全ての価格を、日本の原産材料としてカウントしてよいことを言います。

 

下記の図で説明すると、相手締結国の原産品Aには締結相手国以外の非原産材料も含まれていますが、締結相手国の原産品であるAの価格50ドルすべてを、日本の原産材料費としてカウントしてもよいという規定です。(締結間ロールアップ)

 

 

モノの累積 関税分類変更基準でも使えます!

締結国であるA国で、関税分類変更基準を満たしA国の原産品になったモノは、日本の産品で規定されている関税分類変更基準を満たすことができない場合でも、A国の原産品は日本の原産品としてみなされます!(モノの累積)

 

 

4.2 生産行為の累積とは?

前述した「モノの累積」の場合は、「モノ全体」で原産材料として扱うか否かが判断されるため、部分的なの累積は認められないのに対し、相手締結国のでの生産行為で得られた部分を累積できるので、より原産原産品の資格を獲得しやすくなります!

 

下記の図でご説明すると、相手締結国であるA国の「非原産品」は、@モノの累積の場合は、非原産品の為、全ての価格を非原産品として扱わなければなりませんが、A生産行為の累積の場合は、A国の「原産材料A」やA国の「付加価値C」は、累積により日本の非原産品として扱わなくてよいということになります。

 

これをトレーシングとも言います。

 

CPTPP 原産地規則 徹底解説

 

 

5. 実質的変更の例外A 僅少の非原産材料(DMI)とは?

関税分類変更基準を利用し原産性を証明する場合、HSコードが変化せずに基準を満たさないケースに使用できる救済規定です。

 

デミニマスルールとも言われます。

 

関税分類変更基準を満たさない非原産材料があったとしても、その使用がわずかな場合、日本の原産品として認める救済規定です。

 

産品に占める割合が以下に当てはまる場合、その使用がわずかとして日本の原産品として認められます。

 

CPTPPでの僅少の非原産材料の対象と条件(デミニマスルール)

関税分類変更基準が適用される産品にのみ適用され、原則として産品の価額の 10%以下の場合、日本の原産品として扱うことができます。

 

繊維製品(61類〜63類)の場合は、原則として当該産品の重量の10%以下の場合となります。

 

ただし、以下の非原産材料が特定の産品の材料として用いられる場合、関税分類変更基準の救済規定としてデミニマスルールは適用することはできません。(附属書V-C)

 

ご注意ください!
CPTPP 原産地規則 徹底解説

僅少の非原産材料(デミニマスルール)は、関税分類変更基準でしか使用できません。付加価値基準では使用できませんのでご注意ください! 

 

6. 繊維製品の原産地規則 ヤーンフォワード・ルールの適用

繊維製品の品目別規則は、原則、関税分類変更基準(CTC)が適用されていますが、衣類や縫製品の場合は、
加えて、@紡ぐ、A織る/編む、B裁断・縫製の3つの工程をCPTPP域内で行うことが求められます。(ヤーンフォワード・ルール)

 

CPTPP 原産地規則 徹底解説

 

また、61類及び62類の衣類、63類の縫製品では、HSコードが異なる複数の材料を使用して構成されていることが多いと思いますが、原則として表側の記事に占める面積が最も大きい部分のHSコードに適用される品目別原産地規則を満たす必要があります。(関税分類を決定する構成部分の規定)

 

例えば、下記の図の場合は、面積が一番大きい材質DのHSコードに適用される品目別原産地規則を満たす必要があります。
CPTPP 原産地規則 徹底解説

この「関税分類を決定する構成部分の規定」があるEPAは、以下のEPAとなります!

シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、アセアン、フィリピン、ベトナム、ペルー、CPTPP、英国

 

7. CPTPP 自己申告制度 原産地証明書の作成方法

CPTPPでは、日本商工会議所(第三者制度)が発給する第一種特定原産地証明書は利用することができず、輸出者や生産者が自ら原産地証明書を作成しなければなりません!

 

CPTPPの原産地証明書は、特定のフォームは指定されておりません。

 

その代わり、作成者は協定附属書3-Bが規定する「必要的記載事項」に沿って、原産地証明書を作成する必要があります。

 

7.1 原産品申告書の必要的記載事項

注意が必要なのが、「必要的記載事項」のいずれかが明示されていない原産地証明書は原則無効になりますので十分注意ください!

 

また原産地証明書の有効期限は1年です。

 

原産地証明書に必要な記載事項
@証明者

輸出者、生産者または輸入者のうち誰が原産地証明書を作成したかを明記する。

 

A証明者情報

証明者の氏名又は名称、住所(国名を含む。)、電話番号及び電子メールアドレスを記載する。

 

B輸出者の情報

輸出者の氏名又は名称、住所(国名を含む。)、電子メールアドレス及び電話番号を記載する(輸出者が証明者と異なる場合に限る。)
これらの情報は、生産者が原産地証明書を作成する場合において、輸出者を特定する事項を承知しないときは、要求されない。輸出者の住所は、CPTPP締約国内の産品が輸出された場所とする。

 

C生産者の情報

生産者の氏名又は名称、住所(国名を含む。)、電子メールアドレス及び電話番号を記載し(証明者又は輸出者と異なる場合に限る。)、生産者が複数いる場合には、「複数」(=various)と記載するか又は生産者の一覧を提供する。
これらの情報の秘密が保持されることを希望する者は、「輸入締約国の当局の要請があった場合には提供可能」(=Available upon request by the importing authorities)、と記載することが認められる。生産者の住所は、CPTPP締約国内の産品が生産された場所とする。

 

D輸入者の情報

判明している場合には、輸入者の氏名又は名称、住所、電子メールアドレス及び電話番号を記載する。輸入者の住所は、CPTPP締約国内とする。

 

E産品の品名及びHSコード

産品の品名及び関税分類(HSコード)6桁まで記載する。品名は対象産品を表すのに十分な形で記載する。
1回限りの原産地証明書の場合、インボイス番号(仕入書番号)が判明しているときは、記載する。

 

F原産性の基準

どの原産性基準を使用し原産品としたか記載する。
・完全生産品 WO
・原産材料のみから生産される産品 PE
・品目別原産地規則を満たす産品 PSR
・(累積 ACU)
・(僅少 DMI)

 

G包括的な期間

同一産品を複数回輸出する予定の場合、その期間を記載する。(12か月が限度)

 

H署名と日付、宣誓文

原産地証明書には、証明者が署名し、及び日付を付し、並びに次の誓約を付記する必要があります。

 

「 私は、この文書に記載する産品が原産品であり、及びこの文書に含まれる情報が真正かつ正確であることを証明する。私は、そのような陳述を立証することに責任を負い、並びにこの証明書を裏付けるために必要な文書を保管し、及び要請に応じて提示し、又は確認のための訪問中に利用可能なものとすることに同意する。」

 

「I certify that the goods described in this document qualify as originating and the information contained in this document is true and accurate.
I assume responsibility for proving such representations and agree to maintain and present upon request or to make available during a veri?cation visit, documentation necessary to support this certification.」

 

 

7.2 原産地証明書の記載例

上記でご説明した9つの必要的記載事項を反映させた原産地証明書のサンプルとなります。

 

フォーマットは税関のHPに掲載してありますので、ダウンロードしてご使用ください。

 

CPTPP 原産地規則 徹底解説

 

8. 積送基準とは?

せっかく日本の原産品を証明する特定原産地証明書を取得してもこの「積送基準」を満たしていなければ、原産品とみなされません!

 

積送基準を満たすためのには、下記の@、Aのいずれかを満たさなければなりません。

@日本からCPTPP締結国に直接輸送されること
A積替え又は一時蔵置のために第三国を経由して輸送される場合、当該第三国において積卸し及び産品を良好な状態に保存するため必要なその他の作業以外の作業が行われていないこと。

第三国を経由してCPTPP締結国に輸入される場合の積送基準を満たしていることを証明する資料は、以下のようなものになります。

一般的には「通し船荷証券の写し」があれば積送基準を満たします!

 

1)通し船荷証券の写し
2)第三国において積卸し及び産品を良好な状態に保存するために必要なその他の作業以外の作業が行われていないことを証明するもの

 

9. 書類の保存義務

原産地証明書作成から少なくとも5年間保存義務があります。
保存方法は、紙のみならず電子的媒体でも大丈夫ですが、速やかに取り出せる状態にが要求されています。

 

保存対象は他のEPAと同様に、原産地証明書や原産性を判断した全ての根拠資料の保存が必要になります。

 

原産地証明書のほか、原産品判定を行う際に用いた対比表、計算ワークシート、契約書、仕入書、価格表、総部品表又は製造工程表等々です。

 

特定原産地証明書の根拠書類の保管期間

 

事後確認(検証)として協定国の税関から輸出者又は生産者に対して、産品の原産性について情報提供要請がなされることがあります。!

その際には、産品が原産品であることを証明する必要があります。協定国の税関からの連絡は、外交ルートで日本税関を経由して輸出者又は生産者に対してなされます。従って原産品申告書を作成する場合は、原産品であることを証明する根拠資料を必ず作成しなければなりません!

 

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