付加価値基準(VA)での根拠資料の作り方
原産品判断基準の代表的な2つのルールとして、「関税分類変更基準」と「付加価値基準」というものがあります。
関税変更分類基準とは、HSコードで原産品かどうか判断するルールに対し、付加価値基準は付加される金額の割合で原産品かどうか判断するルールです。
その国の生産工程で付加価値(原材料費・経費・利益等)が、各協定で定められた値を満たしているかで、原産品かどうか判断します。
ここでは付加価値基準(VA)についての解説と、根拠資料の作成方法を解説しています。
最後までお付き合いください!
付加価値基準(VA)とは何か?
まず、付加価値基準(VA)を簡単に言うと、日本で生産や加工をすることにより、協定で定められた値以上のの付加価値が生じれば、材料の原産国に関わらず、その輸出品を原産とする考え方です。
付加価値とは、日本の原産材料費、経費、労務費、間接費、利益などをいいます。
この付加価値が、各協定で定められた値を満たせば、原産品として認められます!
また、付加価値基準(VA)は協定によって下記のようにも言われます。
VA (Value Added)
RVC(Regional Value Content)
LVC (Local Value Content)
QVC (Qualitying Value Content)
VNM (Value of Non-originating Materials) ※1
MaxNOM(Maximum value of non-originating materials)※2
※1 VNM60・・・非原産材料費率が60%以下という意味。日スイスEPA及び日米貿易協定で使用
※2 MaxNOM60・・・非原産材料費率が60%以下という意味。日EUEPA及び日英EPAで使用
満たすべき付加価値率の基準値を閾値(しきいち)とも呼びます。
この閾値は品目や各協定によって異なりますので、お気を付けください。
ここまでの説明では、何を言っているのか分からないかと思いますので、下記の事例を使ってご説明いたします。
<前提条件>
1)A製品を中国に輸出する。(RCEP協定を使用)
2)A製品の付加価値基準は「RVC40%」である。
RCEP協定の場合、付加価値基準をRVCと呼びます。
RVC40%とは、日本での付加価値が40%以上あれば、A製品は日本の原産品と認められるというルールです。
付加価値基準は、付加価値を積み上げていく「積上方式」と、産品のFOB金額から非原産材料費を引いて付加価値金額を算出する「控除方式」という方法がありますが、ここでは簡単な控除方式の方を利用して、原産品規則を満たすか確認していきます。
以下の図を使いながら、付加価値基準のイメージをご説明致します!
付加価値とは、日本で生産や加工をすることにより生じる価値です。
控除方式の場合、製品全体の価格から、日本の付加価値ではない金額を引けば、日本の付加価値の金額が算出できます。
上記の図で計算すると、売値であるFOB¥10,000から、非原産材料費¥4,000を引いた金額が日本の付加価値金額です。
算出された付加価値金額とは、日本の原産材料費や労務費、経費、利益、間接費等々の合計ということです。
そしての付加価値率を計算すると、60%とということが分かりました!
(¥10,000−¥4,000)÷¥10,000×100%=60%
従って、RVC40%≦A製品の付加価値60%なので、A製品は日本の原産品として認められます。
如何でしょうか?
付加価値基準のイメージは理解頂けましたか?
付加価値基準の根拠資料の作成方法
次に、付加価値基準の根拠資料の作成方法について解説いたします。
付加価値基準で必要な書類は、以下の@〜Cとなります。
@計算ワークシート
A総部品表
B生産工程表
C必要に応じて、その他の証明書類(サプライヤー証明書等)
まずは、各協定に定められた付加価値割合を満たしていることを示す資料として、「計算ワークシート」の作成が必要になります。
作成のポイントとしては、まずは全ての材料・部品を「非原産品」として扱い計算しましょう。
この方法が一番効率的です!
製品のFOB金額から全ての材料・部品価格を引いた付加価値金額を算出し、付加価値割合が、各協定で定められた閾値を超えれば、付加価値基準を満たすことになります。
材料・部品の原産性を証明するための資料は不要なので、このやり方が一番効率的です!
具体的な例を使ってご説明いたします。
例えば、輸出する製品が、ワイヤーハーネス FOB¥5,000だとします。
また、協定の付加価値基準がVA40%とします。
まずは、構成部品を下記のように「非原産品」として扱います。
非原産品の合計が¥2,200なので、¥5,000円から¥2,200を引いた金額が、付加価値となります。(付加価値¥2,800)
¥5,000(FOB金額)−¥2,200(非原産材料費)=¥2,800(付加価値金額)
付加価値割合を算出すると、56%ということが分かります。
よって、VA40%を満たすため、ハーネスワイヤーは日本の原産品ということになります!
□ ワイヤーハーネス FOB金額 ¥5,000
もし、閾値である付加価値率40%に達しない場合は、便宜的に「非原産品」として扱っていた部品を、原産品に変更できるか検討します。
その際、購入品の場合は、購入先から「サプライヤー証明書」などを入手し、原産品であることを証明します。
サプライヤー証明書とは
サプライヤー証明書の協力を得られない場合の対処方法
注意点としては、全ての原産品を証明する必要はありません。
協定で定められた閾値を満たせばよいため、原産性が証明しやすい部品から確認を行い、閾値を超えれば、残りの購入先からサプライヤー証明書等を入手する必要はありません!
また、付加価値基準の場合、為替レートや購入単価等が変化すると思いますので、定期的に付加価値割合に変更が無いか確認が必要ということと、閾値ギリギリではなく、余裕をもった付加価値率で管理することをお勧め致します!
計算ワークシートは経済産業省がひな形を用意しています。
ご参考下さい。
ひな形@
ひな形A
そして、計算ワークシートを裏付ける資料として、輸出製品を構成する全ての部品を記載した「総部品表」や、原産性が与えられない軽微な工程及び加工ではないことを証明する「生産工程表」が必要になります。
総部品表とは文字通り、製品を構成する全ての材料・部品が記載したものです。
任意の形式で構いませんが、原産・非原産かそれぞれの材料・部品に記載下さい。
生産工程表とは、日本で生産がおこなわれていることや、原産性が与えられない軽微な工程及び加工ではないことを証明する資料です。
原産性が与えられない軽微な工程及び加工とは何?
生産工程表は下記のように、あまり細かな情報はいらず、大まかな流れを記載していきます。
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