日EU経済連携協定(EPA)における付加価値基準のトレーシングとは何か?
日EU経済連携協定(EPA)における付加価値基準の救済規定の1つとして「トレーシング」という規定があります。
このトレーシングという規定を上手く利用することで、今まで原産品として判定できなかった産品が、原産品として判定できる可能性があります。
ただしトレーシングの規定は協定文を読んでも難しく、専門家などではないと、なかなか理解するのが困難かと思います。
そこで、このページではできるだけ分かり易く「トレーシング」について解説していきます。
最後までお付き合いください!
まずトレーシング規定は、日EU経済連携協定(EPA)の「附属書3−A注釈4(f)」に記載があります。
「VNM」とは、産品の生産において使用される非原産材料の価額(輸入の時の当該非原産材料の課税価額)をいい、当該産品の生産者が所在する締約国の輸入港への輸送において要した運賃、適当な場合には保険料、こん包費及び他の全ての費用を含む。当該価額が不明であり、かつ、確認することができない場合には、いずれかの締約国において当該非原産材料に対して支払われた最初に確認することができる価額を用いる。
上記で記載のVNMとは非原産材料の価額のことを言います。
この記載だけでは、トレーシングとはいったい何なのか分からないかと思います。
さらに詳しく見ていきましょう!
附属書3−A注釈4(f)を分かり易く言い直すと非原産材料費(VNM)は、輸入時の当該非原産材料の課税価額=輸入価格であるといっています。
課税価格とは文字通り関税を課する価格で、CIF価格の事を指します。
すなわち、トレーシングでは、輸入後に当該非原産材料に対して日本国内で行った加工等により付加された価値を、VNMに含める必要はないのです。ここがポイントです!
ここで付加価値基準を算出する時の式を見てみましょう!
今回は控除方式(RVC)を使用して解説します。
控除方式は、産品の価格から非原産材料費を引いて、日本の付加価値金額が算出されます。
そして産品全体に占める日本の付加価値割合がRVC(付加価値割合)ということになります。
ここで使用する非原産材料価格(VNM)は、輸入されるときの課税価格とするとしているので、下記図で説明すると、非原産品材料Y($23)は全体としては非原産品ですが、輸入後に当該非原産材料に対して日本国内で行った加工等により付加された価値を、非原産品(VNM)に含める必要はない、すなわち原材料A($5)と付加価値等C($3)は原産品として扱ってよいのです!
非原産品材料Y($23)のうち、8ドルは原産品としてカウントしても良いのです。
最終製品Zの付加価値割合を計算すると以下のようになります。
トレーシングを使用することで、付加価値基準を満たしやすくなりますので、上手く利用しましょう!
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