救済規定 原産地規則におけるデミニマスルール(僅少)
関税分類変更基準を満たさない場合の救済規定としてデミニマスルールというものがあります。
「デミニマス」とは日本語で「僅少の非原産材料」と訳されます。
また協定上は「許容限度」と記載される場合もあります。
一部の非原産材料に関して、関税分類変更基準を満たさない場合であっても、特定の割合を超えなければ(ごく僅かであれば)、考慮しなくてもよいという救済規定です。
各協定や産品によって、特定の割合が異なってきますが、よくあるのが、全体に占める割合が、10%以下であればその非原産材料が関税分類変更基準を満たしていなくても、ごくわ僅かな非原産材料として無視できます。
注意しなければならないのは、全ての品目でこのデミニマスルール(許容限度)が使えるわけではありません。
協定により、デミニマスルールが使えない産品(HSコード)がありますので、使用する場合は協定毎に確認する必要がありますのでご注意ください!
それでは、具体的な例で見ていきましょう!
@日本で生産されたプリンターを協定相手国に輸出する。
Aプリンターの原産地規則は関税分類変更基準 CHT(4桁変更)を使う。
BプリンターのFOB価格は300ドル HSコード:8443.32
C輸入部品であるプリンター専用カバーはCIF価格15ドル HSコード:8443.99
例えば、日本にて輸入部品である非原産材料のプリンター専用カバー(8443.99)を組み込んでプリンター(8443.32)を生産し、協定相手国に輸出する場合、プリンター専用カバーのHSコードが「8443」で、プリンターのHSコードも「8443」の為、HSコードが変化していないため、関税分類変更基準が使用できません。
このような時にデミニマスルール(許容限度)が使用できるか検討していきます。
まず当該協定で、8443がデミニマスルール(許容限度)が使えるのか確認します。
今回は、RCEP協定を例に見ていきます。
RCEPでは、第84項は非原産材料の価格が、当該産品のFOB価格の10%以下の場合、デニミマスルールが使えます。
次に、非原産材料(プリンター専用カバー)が、プリンターのFOB価格に対し、何パーセントか計算します。
15ドル÷300ドル=5%
非原産品であるプリンター専用カバーは、FOB価格の10%以下なのでデミニマスルール(許容限度)を使用することで原産品となることができます。
協定毎にデミニマスルール(許容限度)を使用できる産品(HSコード)と、割合が決められていますので、間違いの無いよう確認してください!
各EPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目(デミニマスルール適用対象品目)
関税分類変更基準を満たさない場合であっても、ごく僅かであれば、考慮しなくてもよいという具体的な救済規定を各協定毎に見ていきましょう!
多くの協定では、関税分類変更基準を満たさない材料があっても、その材料の価格が、製品全体に占める価格の10%以下の場合、ごく僅かであると認められ、その材料は原産品として認められます。
デミニマスルール(許容限度)は、HSコード毎に決められています。
通関業者でない限り、HSコードに馴染みのある方は少ないかと思われます。
HSコードがわからない方は、下記の関連記事もご参照ください!
<関連記事>
HSコードについてはこちらをご参照下さい。
それでは各協定のデミニマスルール(許容限度)を見ていきましょう!
下記に記載した各協定のデミニマスルール(許容限度)は、イメージを持って頂くため、大まかな範囲で記載しています。
実際にデミニマスルール(許容限度)を使用する場合は、各協定をご確認ください。
- RCEPにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
- 日EU EPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
- 日シンガポールEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
- 日メキシコEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
- 日マレーシシア、日インドネシア、日ブルネイ、日フィリピンEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
- 日チリEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
- 日タイEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
- 日アセアンEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
- 日スイスEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
- 日ベトナムにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
- 日インドEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
- 日ペルーEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
- 日オーストラリアEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
RCEPにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
※第50項〜第63類の僅少の非原産材料は、価格と重量のいずれかを選択することが可能です。
日EU EPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
以内(※産品の材料の構成等により、異なる許容限度が適用される為、注意すること)
日シンガポールEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
日メキシコEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
日マレーシシア、日インドネシア、日ブルネイ、日フィリピンEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
日チリEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
※ただし、2008.92は産品のFOB価額の10%以下
日タイEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
日アセアンEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
日スイスEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
日ベトナムにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
日インドEPAにおける僅少の非原産材料の適用対象品目
(ただし1604.20,1605.20,1605.90,2101.11,2101.20,2106.10,2106.90,2207.10,
2207.20には適用できない。)
(ただし2905.44は適用できない)
(ただし3502.11、3502.19は適用できない)
(ただし4601.29,4601.94,4602.19は適用できない)
(ただし5001.00,5003.00,51.02,51.03,52.01〜52.03,53.01,53.02には適用できない)