RCEPにおける累積(締結間ロールアップ)について
RCEPは日本を含む15か国間での多国間の経済連携協定です。
もし付加価値基準において、付加価値基準の原産割合を満たしていない場合(RVC40%)でも、あきらめないでください。
他の多国間経済連携協定にもありますが、RCEP協定においても、他の締約国の原産品を自国の原産材料とみなして使用することが認められる『累積』という考え方があります。
自国1国では原産地規則を満たすことができなくても、他の締約国の原産品を累積することで原産品としてみとめられる場合があるのです。
いわゆる締結間ロールアップ(モノの累積)という考え方があります。
締結間ロールアップの考え方(モノの累積)
それでは具体的な例を挙げて見ていきましょう!
まず大前提として、RCEPの付加基準の閾値は40%です。
すなわち、原産品の割合が40%以上無いと原産品とは認められず、非原産品として扱われます。
これを踏まえて、下記図を見ていきましょう!
中国材料Aと韓国材料Bはそれぞれ原産資格が70%、50%あるので、それぞれの国の原産品として認められます。
逆にタイ材料Cは原産資格は10%しかないので原産品として認められません。
RCEPにおける累積とは、締結国の原産品全てを原産品として扱うことができるのです。
例えば、材料Aは原産品35ドル+非原産品15ドル=50ドルですが、非原産品15ドルも原産品として扱ってよい(ロールアップ↑)、すなわち原産品材料Aは締結国の原産品として50ドルすべてを原産品として、累積していいのです。
逆に材料Cは、非原産品なので、材料Cに使用されている原産品はカウントできません。
すなわち原産品3ドルはロールダウン↓し材料Cの30ドル全てを非原産材料と扱います。
材料Cについては、締約国からの輸入であるものの、非原産品であることから、たとえ原産品が入っていたとしてもそれは累積することはできません。
締結間ロールアップによる累積を使用することで、原産品と認められやすくなりますので、累積を上手く活用しましょう!
生産行為の累積(トレーシング)とは
累積には、上記でご説明した「モノの累積」(締結間ロールアップ)の他に、、「生産行為の累積」(締結間トレーシング)と呼ばれるものがあります。
これは、他の締約国で行った生産行為を自国で行った生産行為としてみなすという考え方です。
以下の図で具体的に見ていきましょう!
モノの累積は、「モノ全体」で原産品として扱うか否かが判断されるため、100か0かのどちらかになりますが、生産行為の累積は、締約国の生産行為を自国で行った生産行為とみなすことができるため、他の締約国の生産行為で得られた原産割合である10%の部分は、自国の原産割合として累積することができるのです。
生産の累積(締結間トレーシング)は、RCEPの付加価値基準を満たすために、非常に有利なルールですが、残念ながら、RCEP協定の中では生産行為の累積の導入が検討されることとなっておりますが、まだ導入されておらず、使用することができません。
すなわち、RCEP協定での『累積』とは、モノの累積(締結間ロールアップ)を検討していくことになります!
RCEP協定にはこのように書いてあるよ!
第三・四条 累積
1 この協定に別段の定めがある場合を除くほか、第三・二条(原産品)に定める原産品の要件を満たす産品又は材料であって、他の締約国において他の産品又は材料の生産において材料として使用されるものについては、完成した産品又は材料のための作業又は加工が行われた当該他の締約国の原産材料とみなす。
→モノの累積の事で締結間ロールアップと言います。
2 締約国は、この協定が全ての署名国について効力を生ずる日に、この条の規定の見直しを開始する。この見直しにおいては、いずれかの締約国において産品について行われる全ての生産行為及び付加される全ての価値に1の累積の適用を拡張することを検討する。締約国は、締約国が別段の合意をする場合を除くほか、見直しの開始の日から五年以内に当該見直しを終了する。
→生産行為の累積の事で、まだ検討中の段階ですが、もしこれが実現すれば、モノの累積も、生産行為の累積も適用可能な、「完全累積」が実現されることになります。
早く実現してほしいものです。
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