サプライヤー証明書とは

取引先に納入した自社の原材料等について、取引先から特定原産地証明書を取得するために、サプライヤー証明書を出して欲しいと言われたことはありませんか?

 

なぜ取引先が、御社にサプライヤー証明を要求するのかというと、納品した御社の製品・材料等が各経済連携協定(EPA)で決められた「原産性」があることを証明して欲しいのです。

 

サプライヤー証明書とは、御社の製品・材料が、輸出国との協定に基づく原産性を有しているか証明するものです。

 

サプライヤー証明書は、取引先が輸出する産品の原産地基準を満たすために必要な場合があるのです。

 

サプライヤー証明書の作成手順
どの協定を使用するのか確認し、どの年度のHSコードを使用するか確認する。
御社の製品・材料のHSコードを特定する。
当該協定で決められた原産地規則を確認し、どのような基準を満たせば日本の原産性を有することができるか確認してください。<例>関税分類変更基準のCC(2桁変更)、付加価値基準(閾値40%以上など)
原産地規則を満たしていることを裏付ける資料の作成(対比表や計算ワークシート等)
サプライヤー証明書を発行(任意のフォームで結構です。)

 

注意点としては、サプライヤー証明書は、その根拠となる対比表や計算ワークシート、その他裏づけ資料の提出を求められる可能性がありますので、必ず根拠となる資料も作成します。

 

では具体的にどのようにすればよいか見ていきましょう!

 

 

前提条件

今回は前提条件として、日タイ経済連携協定でちょうつがい(Hinges)のサプライヤー証明書を発行する例で具体的にご説明致します。

 

最後までお付き合いください!

STEP1 どの協定を使用し、何年度のHSコード使用するか確認する!!

HSコードは5年に1度、大きな改正があります。
各協定により使用するHSコードが異なりますので、まずはどの年度のHSコードを使用するのか、確認します。

 

そのためには、サプライヤー証明書を要求された取引先に、どの協定を使い輸出するのか確認しましょう。

 

今回はタイとの協定を使用しますので、2002年のHSコードを使用します!
※タイとの協定は2022年1月1日からは、2017年のHSコードに変更になりました。

 

HS2002年
  • 日シンガポール経済連携協定
  • 日メキシコ経済連携協定
  • 日マレーシア経済連携協定
  • 日フィリピン経済連携協定
  • 日チリ経済連携協定
  • 日ブルネイ経済連携協定
  •  

    HS2007年
  • 日ベトナム経済連携協定
  • 日スイス経済連携協定
  • インド包括的経済連携協定
  • 日ペルー経済連携協定
  •  

    HS2012年
  • 日オーストラリア経済連携協
  • 日モンゴル経済連携協定
  • CPTPP(CPTPP)協定
  •  

    HS2017年
  • 日EU経済連携協定

  • 日米貿易協定

  • 日英包括的経済連携協定
  • 日タイ経済連携協定
  • アセアン包括的経済連携協

  • 日インドネシア経済連携協定
  •  

    HS2022年
  • RCEP協定
  •  

     

    STEP2 証明する御社の産品のHSコードを特定する!!

    次に御社の産品のHSコードを特定します。日本のHSコードは9桁ですが、EPAで使用するHSコードは6桁で大丈夫です。HSコード6桁を特定していきます!

     

    HSコードにより、原産性を判断する基準が異なってきますので、非常に重要な作業です!

     

    「HSコード」とは、「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められたコード番号です。

     

    HSコードとは貿易上それが何であるのか世界各国で共通して理解できるよう取り決めた共通番号のことです。輸出入される貨物全て、HSコードに変換し、HSコードにて輸出入通関を行います。

     

    HSコードは通関士のような専門職の方ではないと、なかなか馴染みがないと思われます。
    またHSコードを特定するのは、かなりの専門知識が必要になります。

     

    今回は、ちょうつがい(Hinges)のサプライヤー証明書を発行するので、ちょうつがい(Hinges)のHSコードを特定します。
    答えから申しますと、ちょうつがい(Hinges)のHSコードは「8302.10-000」です。

     

    HSコードを解説しますと、左から6桁目まで(8302.10)は世界共通となり、7桁目以降は各国で決められた番号になります。
    EPAでは世界共通の6桁を使用致します。7桁目以降は使用しません。

     

    HSコードは前の2桁を類、4桁を項、6桁を号と呼びます。
    大分類、中分類、小分類とイメージ頂ければよいかと思います。 

     

    では実際にHSコードはどのように特定するのか見ていきましょう!

     

    HSコードは税関ホームページを見て特定します。
    こちらをクリック ←税関HPに飛びます。

     

    協定によりどの年度のHSコードを使用しなければならないのか決められております。
    今回の事例では、タイとの経済連携協定ですので、2002年のHSコード使用します。

     

    税関のHPには各年度のHSコードが掲載されています。
    税関の注意書きには、HS2012、HS2007、HS2002のHSコード(6桁まで)を確認する場合には、それぞれ2016年6月7日版、2011年8月版、2006年4月版を見て下さいとの記載がありますので、タイとの協定で使用するHS2002は、下記にあるように2006年4月版をクリックして確認します。

     

    また、HSコード(6桁まで)は輸出・輸入共通です。
    実行関税率表(2006年4月版)をクリックすると、下記のように大分類である1類〜97類までが出てきます。

     

     

    ちょうつがい(Hinges)は、どの類(大分類)に分類されそうか当たりをつけます。
    これは簡単そうで、実際には非常に難しいです。
    当たりをつけるのには、通関士のような専門性と経験が必要です。
    ここで当たりを間違うと、6桁のHSコードの特定はできません・・・。

     

    通常はお持ちではないと思いますが、「輸出統計品目表」という、厚い本があるのですが、その一番後ろに索引がありますので、こちらから当たりをつける方法もあります。

     

     

    1類~97類までを確認し、ちょうつがい(Hinges)が分類される類を特定します。ちょうつがい(Hinges)は、第83類の各種非金属製品に分類されます。

     

    大分類を特定したら、次に中分類である「項」の特定をしていきます。
    右横の税率をクリックします。

     

    すると、下記のように83類のHSコードが9桁まで出てきます。
    まずは、下記の四角で囲ったように4桁レベルで、比較しています。
    8301,8302,8303,8304・・・・・

    4桁レベルで検討して、ちょうつがい(Hinges)は、「8302」の”取付具その他これらに類する物品”であることを確認します。
    4桁レベルまでのHSコードを特定しました。
    あともう少しです!

     

    次に6桁レベルのHSコードを特定していきます。
    すると、830210にずばり、”ちょうつがい”が記載されています。
    従い、ちょうつがい(Hinges)のHSコードは、「830210」と特定することができました。

     

     

    今回のちょうつがい(Hinges)は、HSコードの特定としては、非常に易しい分類に入ります。
    実際は、ずばり品名が掲載されていないものの方が多く、通関士でさえ、非常に頭を悩ませます・・・。

     

    実際は、様々な資料を見ながら、HSコードを特定していきます。

     

    例えば、HSコードを特定する際のルールというものが決められています。むやみやたらにHSコードは決められないのです。世界統一のルールというものがあるのです。

     

    このページでは解説は割愛しますが、「関税率表の解釈に関する通則」というものがあり、HSコードを設定する上でのルールが決められています。

     

    また、税関のHPには、「関税率表解説」というHSコードを細かく解説したものが掲載されています。ずばり品名が掲載されていない物品は、それぞれの人の解釈によって、様々なHSコードに分類されてしまう可能性が出てきてしまうので、この「関税率表解説」に細かくそれぞれのHSコードの解説がされています。通関士は、HSコードを分類する上で、この「関税率表解説」をかなり頻繁に見ています。

     

    さらに、税関が回答した事例等なども見ます。

     

    以下に参考でリンクを貼っておきました。
    HSコードを分類するのは、非常に専門的な知識と、経験が必要なのです。

     

    関税率表の解釈に関する通則

    https://www.customs.go.jp/tariff/2017_1/data/tuusoku.pdf

     

    関税率表解説

    https://www.customs.go.jp/tariff/kaisetu/index.htm

     

    品目分類事例

    https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/bunruijirei/bunruijirei_index.htm#09

     

    STEP3 原産地規則を確認し、どの基準を満たせば日本の原産性を有することができるか確認する!

    サプライヤー証明書を発行する「ちょうつがい(Hinges)」のHSコードが「830210」ということを特定できました。

     

    次に確認することは、日タイ経済連協協定で、HSコード「830210」は、どのような基準を満たせば日本の原産性があると認められるか、その原産地規則(ルール)の確認をしていきます。

     

    確認する方法としては、協定を読み確認するのもいいですが、より簡単に確認する方法として、税関HPの「原産地規則ポータル」から確認するのがよいでしょう。

     

    原産地規制ポータル

    https://www.customs.go.jp/searchro/jrosv001.jsp

     

    @どの協定の原産地規則を調べるがチェックを付けます。今回は日タイ経済連携協定を選択します。。

     

    A調べたいHSコード6桁を品目欄に入力します。今回は「ちょうつがい(Hinges)」のHSコード「830210」を入力します。

     

    B「検索/Search」を押し、原産地規則を確認します。

     

     


     

    「ちょうつがい(Hinges)」のHSコード「830210」の原産地規則が検索されました!
    「ちょうつがい(Hinges)」が日本の原産品と認められるためには、以下の基準を満たさなければなりません。

     

    CTH 又は QVC40

     

    CTH・・・関税分類変更基準(HSコード4桁変更)

    QVC40・・・付加価値基準(付加価値40%以上)

     

    上記の原産地規則を開設すると、大きく2つの基準があり、そのいづれかを満たせば日本の原産品と認めることができます。

     

    1つ目の原産地規則は、関税分類変更基準で、CTHとは項の変更(HSコード4桁)を指します。

     

    これは部品等のHSコードが、最終製品に加工され、HSコードが変更された場合、HSコードの変更された場所で実質的な変更があったと認めるというものです。

     

    関税分類変更基準はCTCと言われ、CTHの他にもCC(2桁変更)やCTHS(6桁変更)などもあります。

    CTC・・・関税分類変更基準
     → CC (Change in Chapter)・・・HSコード2桁変更(類の変更)
     → CTH (Change in Tariff Heading)・・・HSコード4桁変更(項の変更)
     → CTHS (Change in Tariff Sub Heading)・・・HSコード6桁変更(号の変更)

    参考記事

    HSコードとは
    関税分類変更基準(CTC)での必要書類

     

     

    具体的な例でご説明致します。
    以下の2つの部品を使用し、日本で「ちょうつがい」を製造します。

     

    <部品>

  • ステンレス鋼板:7219.32
  • ステンレス棒:7222.11
  •  

    <完成品>

  • ちょうつがい:8302.10
  • ステンレス鋼板(7219)とステンレス棒(7222)は、項レベル(HSコード4桁)で、最終製品であるちょうつがい(HSコード8302)に、日本で変化していますので、統計品目番号変更基準(HSコード変更基準)を満たします。

    7219、7222→8302に変化

     

    言い換えれば、「ちょうつがい」に使用される部品等は、「ちょうつがい」のHSコード「8302」以外のHSコードである必要があるということです。

     

    2つ目の原産地規則は、付加価値基準です。

     

    QVC40とは、日本の付加価値が40%以上あれば原産品として認められるという基準です。

     

    付加価値基準は各協定によって、下記のようにも言われます。

    VA (Value Added)
    RVC(Regional Value Content)
    LVC (Local Value Content)
    QVC (Qualitying Value Content)
    VNM (Value of Non-originating Materials) ※1
    ※1 VNM60%・・・非原産材料費率が60%以下という意味

     

    今回のQVC40とは、産品のFOB価格から、非原産材料を引いた金額が、産品全体の価格の40%以上あれば日本の原産品と認められます。

     

    付加価値とは、日本で生産や加工をすることにより生じる価値です。
    控除方式の場合、製品全体の価格から、日本の付加価値ではない金額を引けば、日本の付加価値の金額が算出できます。

     

    下記の図で計算すると、売値であるFOB¥10,000から、非原産材料費¥4,000を引いた金額が日本の付加価値金額です。

     

    算出された付加価値金額とは、日本の原産材料費や労務費、経費、利益、間接費等々の合計ということです。

     

     

     

    そしての付加価値率を計算すると、60%とということが分かりました!
    (¥10,000−¥4,000)÷¥10,000×100%=60%

     

     従って、QVC40%≦ちょうつがいの付加価値60%なので、ちょうつがいは日本の原産品として認められます。

     

    今回、サプライヤー証明書を作成する、ちょうつがい(HSコード830210)は、関税分類変更基準又は付加価値基準のどちから一方を満たせば、日本の原産品として認められるということが確認できました。

     

    STEP4 原産地規則を満たしていることを裏付ける資料の作成(対比表や計算ワークシート等)

    次に、実際にSTEP3で確認した原産地規則を満たしているのか確認をしていきます。

     

    STEP3で確認したように、「ちょうつがい」が日本の原産品と認められるためには、関税分類変更基準または付加価値基準を満たす必要があります。

     

    どちらを選んで頂いても結構です。
    御社が証明しやすい方を選んで下さい。

     

    ただし、お勧めするのは関税分類変更基準です。なぜかと申しますと、付加価値基準の場合、材料の金額が変動すると、付加価値率が変わってくるので、定期的に価格の確認をしなければなりません。一方、関税分類変更基準は、金額が変わっても原則、影響を受けません。

     

    管理という面から言うと、関税分類変更基準をお勧め致します。

     

    今回は、関税分類変更基準を使い、ご説明致します!

     

    関税分類変更基準(CTC)で必要な書類
    対比表
    対比表に記載された材料・部品で製造されることを裏付ける資料

    ・総部品表・製造工程フロー図 等

    原産と扱った材料・部品については、その原産性を示すための根拠となる資料

    ・サプライヤー証明書、材料・部材が原産品でであることを示す資料等

    関税分類変更基準でマストになる書類が、@対比表、A総部品表、B製造工程フロー図の3点です。
    必要に応じてその他の書類が必要になることがあります。

     

    @まずは、輸出産品を構成している材料・部品を調べ、総部品表を作成します。

     

    Aそして総部品表の材料・部品を対比表に転記し、HSコードを確認し、HSコードが変更されているか確認をしていきます。
    関税分類変更基準はこのHSコードの確認が一番重要な部分になります。

     

    対比表の記載例

     

     

    HSコードが4桁レベルで変更されていることを確認します。
    HSコードを対比させているので「対比表」と呼んでいます。

     

    Bそして、対比表を裏付ける資料として、誰が、どこで、どのように製造されたか分かる資料を作成します。
    これが「製造工程フロー図」又は「生産工程表」と言われるものです。

     

    ※生産工程表の記載例

     

     

    これで、「ちょうつがい」が、日タイ経済連携協定における原産品であることを証明する裏付け資料が作成しました!

     

    いよいよ、次にサプライヤー証明書を発行します!

    STEP5 サプライヤー証明書を発行する。(任意のフォームで結構です。)

     

    サプライヤー証明書は決まったフォームは無く、任意のフォームで作成して結構です。

     

    参考で、サプライヤー証明書のひな形をご紹介いたします。

     

    ↓ひな形はこちらをダウンロード下さい!
    サプライヤー証明書のひな型

     

     

    サプライヤー証明書の例

     

    これでサプライヤー証明書は完成です。

     

    お疲れさまでした!

     

    最後に1つだけ注意点を付け加えさせて頂きます。
    裏付け資料等は、一定期間保管が必要になりますので、ご注意ください。

     

    こちらの記事もご参照下さい!

    サプライヤー証明書関連書類の保存期間について

     

    サプライヤー証明書でご不明な点がございましたら、当事務所にご相談いただければと思います。

     

    当事務所ではサプライヤー証明書及び裏付け資料の作成も承っております。

     

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