AEO特定輸出者制度、特例輸入者制度について
AEO制度とは、Authorized Economic Operatorの略で、日本語に訳すと、「認定事業者」といい、もっと平たく言うと「税関から認められた会社」となります。
この制度ができた背景として、2001年9月11日の米国で発生した同時多発テロを契機に、各国で貨物のセキュリティー(安全)の確保が重要な課題となりました。
例えば、航空貨物や海上コンテナの中に爆発物などを隠されていたら、大変大きな被害が予想されますよね・・・。
テロリスト等は、狙った国を混乱させるため、貨物等に爆弾などを仕込む可能性が十分考えられたのです。
しかし、毎日膨大な輸出入をしている中、貨物の安全を守るため、全ての貨物を検査するのは、輸出入が滞ってしまい、経済的な打撃が大きく、現実的に不可能です。
「貨物の安全」を確保しつつ、「貿易取引の円滑化」も今まで通り行いたい!
このような相反する2つの要求を実現させる為にできたのが、このAEO制度です!
2005年にWCO(世界税関機構)において「@セキュリティ管理」と「A法令遵守の体制」が整備された事業者を税関が認定し、税関手続の簡素化等のベネフィットを与える「AEO制度」ができ、現在では日本を含む多くの国々で導入されています。
日本では、2006年から、まずは輸出者を対象にするAEO制度が導入されました。
その後、輸出者だけではなく、輸入者や通関業者等に対象を広げ、現在では以下のような6つの制度があります。
1)特定輸出者制度
2)特例輸入者制度
3)特定保税承認者制度
4)認定通関業者制度
5)特定保税運送者制度
6)認定製造者制度
セキュリティーの管理とは、バンニングする場所や、貨物を取り扱う場所が、例えば不審者等が入れないように物理的なセキュリティーが構築されているのか、また貨物の安全を守るための仕組みが講じられているか等が求められます。
要するに、一言でいえば、テロリスト等に貨物に爆弾等を隠されることができない仕組みを講じることが求められます。
また不正輸出等をしないよう、法令順守の体制も求められます。
そして税関に「@セキュリティ管理」と「A法令遵守の体制」が整備された事業者と認定された事業者には、税関手続き上のベネフィット(優遇措置)が与えられます。
いくつかベネフィットはありますが、一番のベネフィットは「検査がほぼ無くなる」ことです。
税関が認めた事業者に対しては、検査を無くし、その他の事業者の監視を強化することで、「貨物の安全」と、「貿易手続きの円滑化」を同時に実現することができるのです!
私は、2007年に特定輸出者を取得し、2008年には特例輸入者を取得した経験を持ちます。
そして検査が出ないベネフィットを利用して、輸出入の自社通関を立ち上げた経験を持ちます。
※自社通関の話は、また別の記事でお話しします!
AEO制度を使用して通関を行う場合、区分3(現物検査)は出たことはないのですが、AEO制度ができた最初の頃は、区分2(書類検査)が、たまに出ていました・・・
その後、様々な交渉の結果、税関のシステムも変更になり、現在では、ほぼ区分1(即時許可)しかでないと思います。
税関では、検査がゼロになるとは決して言わず、ほぼ検査が無くなるという言い方をします。しかし私が実際に通関を行っていた経験上では、実質的には書類検査を含め、検査は出ないと思って頂いてよいと思います。(該当品などは除く)
しかし良いことばかりではありません。
AEOを取得・維持する為には、様々な管理コストが掛かってきます・・・。
例えばHSコードの管理やマニュアルの整備、社内管理体制の管理、社内教育、ドレージ会社等の委託業者の指導、保税倉庫会社の指導等々・・・・・・。
そして3年に1度、税関の監査が入ります。
(ちなみに私は東京税関AEO部門の監査を5回経験してます・・・。)
会社や扱う貨物によって違いますが、検査が無くなるメリットと、管理コストを比べると、よく、AEOを取得するメリットがあまり無いのではという話しをよく聞きます。
確かに、企業にとって大きなメリットはあまりないとは思うのですが、AEO制度を利用して、社内のコンプライアンス体制を構築するメリットはあるかと思います。また企業のCSRとしての意義は大きいと考えます。
さらにAEOのメリットである「検査が無くなる」ということを利用して、自社通関を始めれば、コスト的に大きなメリットを享受することができます!
自社通関を行えば、企業としてAEOを取得するメリットは大きいのです!
少し、ハードルは高いですが、私ができたので皆さんもできます!
ぜひチャレンジしてみて下さい!